無可有庵

音楽その他ついて

椎名亮輔先生『狂気の西洋音楽史』を読み了えて

今回は最近読んだばかりの本のご紹介です。著者は椎名亮輔さん(同志社女子大学教授)、タイトルは『狂気の西洋音楽史〜シュレーバー症例から聞こえてくるもの』。ご本人曰く「あまり反響がなかった」そうですが、私は純粋に楽しめました。知的・音楽的好奇…

フーガ再考

高校時代に買った本。一度も開いたことが無かったが今、没頭している。と言うのは、フーガの書き方が書いてあるのではなく、フーガの歴史についての本だったからだ。 バッハの『平均律』に出会ったのもその頃だったが、未だに飽きることが無い。ただ現在の関…

座安先生のピアノコンサート

昨日はイギリス在住のピアニスト・座安里佳先生のコンサートへ町田に。こじんまりとした空間で、19世紀的なサロン空間というよりは20世紀絵画のアトリエのようだった。というのもエル・アナツイというガーナ出身の彫刻作品に対してご本人が受けられたという…

キリスト教は社会民主主義に適合する

SNSで見つけたのですが、面白かったです。話手がミシガン大学の講師らしく、最後まで(途中聞き直しながら)聞き終えました。 面白いと感じたのは、キリスト教(聖書)が如何に資本主義に合うにように解釈されるようになったか、つまり「社会主義的」解釈を封印…

SNSで見つけたのですが、面白かったです。話手がミシガン大学の講師らしく、最後まで(途中聞き直しながら)聞き終えました。 面白いと感じたのは、キリスト教(聖書)が如何に資本主義に合うにように解釈されるようになったか、つまり「社会主義的」解釈を封印…

イギリスから帰国

先週、英国への旅(ベトナム経由)を終え帰国しました。弾丸な部分もありましたが、長い休暇でもありました。ピアニスト/音楽者のイアン・ペイスさんや友人の好意で紹介してもらったピアニスト座安里佳先生を訪問出来た事は旅のハイライトでしたが、その他にも…

藤倉さんとのTwitterのやり取り

半分は英語の勉強にと思って視聴しました。藤倉大さんは勿論イギリス在住の世界的な作曲家として素晴らしいですが、彼を育てたブーレーズはまた良いなと思いました。藤倉さんとは少しTwitterで言葉を交わした(会ったことはありません)のですが、自分の耳(…

Just Music in Koganei Vol. 5

「Just Music in Koganei Vol. 5」 来年2月23日(金)に演奏会を開催します。今月は引っ越しや教室のクリスマス会などがあり、時間が矢のように過ぎていきますが、音楽と向き合える時間が少しでもあることに感謝しています。(更に大きなプロジェクトも進行…

実証主義批判からバッハへ

実証主義批判からバッハへ 最近、こちらの本(『ニュー・ミュージコロジー:音楽作品を「読む」批評理論』)を紐解いておりました。圧倒的に面白い内容ですが、訳書である為にやはり原著にあたるとより分かり易いです。例えば一つ目の収録はジョセフ・カーマ…

音楽と国境について (About Music and National Borders)

しかし以前、世界情勢に鑑みてロシアの演奏家のコンサートがキャンセルになったり、ロシア人作曲家の作品の演奏が取りやめになったといったニュースを耳にしたが、全く本質を捉えていないと思う。それなら世界中でロシア音楽とウクライナの音楽を一緒にやれ…

ピアノ教育法から文化芸術について思考する

最近、アメリカ人子弟にもピアノを教えている。上級者ではないけど、それだけに難しさも感じている。英単語が出て来ないでもやもやしながらあとで調べるということもよくある。そしてアメリカのピアノ教育のYouTubeを見たりするのだけど、やはりアメリカとヨ…

音楽と異文化交流

音楽学研究と言うと大袈裟ですが、最近になってようやく楽曲の背景に関心を持つようになりました。以前、友人に200年前の同郷人より地球の反対側に住む同時代人の方が遥かに理解し易いと言われてなるほどと思いましたが、ではBeethovenは地球の反対側に住む2…

音楽の原風景へ〜8/13の演奏会を終えて

8/13の演奏会を何とか終えることが出来ました。ご来場くださった皆様、本当に有難うございました。コンサートの時間と台風8号が見事に重なりキャンセルが続出し、またコロナ感染者数も高止まりを続ける中での何とかの開催でした。重ねて御礼申し上げます。 …

「表現としての音楽」と「福祉としての音楽」

私は約3年前に社会福祉の勉強を始め、殆どその時期に音楽を断念せざるをえなかったが、これまでに幾つかの医療・福祉系のお仕事で音楽をやらせてもらい自分なりに音楽とは何か?音楽療法とは何かについて考えてきた。以下は随筆的に「何が通常の意味での音楽…

2022調布国際音楽祭へ

小金井市に在住しており、距離的に近いながらも一度も行けていなかった調布音楽祭。この度、打楽器科の同級生がフェスティバル・オーケストラに乗る事になり、チケットをご招待頂いた。プログラムはメンデルスゾーン:「フィンガルの洞窟」、シューマン:ピ…

音楽療法士としてのピアノ教師

最近はお陰様で数名の生徒さんが集まり、少しずつ枠が埋まって来ています。とても嬉しい事です。レッスンは生徒さんそれぞれのニーズに沿ったものでありたいとは常々思っていますが、同時に私の音楽に求める理想像を伝えて行く側面もあり、それがなくてはピ…

近況

Facebookやブログで更新してなかったのですが、3月に無事、社会福祉士(+介護福祉士)の国家試験に合格しました。何というか2年半、音楽に掛ける時間を我慢し頑張った甲斐があったかなと思っています。 もともと音楽家として活動・勉強している間に色々なアル…

音楽において芸術性と大衆性とは〜林光『音楽の本』を読んで

現在、林光さんの『音楽の本』を読んでいる。どの箇所もとても面白く、思考を喚起されるのだけど、特に白眉と思ったのがベートーヴェンの音楽の大衆性についている箇所:「ゲーテが、ベートーヴェン自身のピアノで、第五交響だったかを聴かされ、すっかり不…

幼児教育について思うこと

幼児から大人の方まで幅広くピアノを指導しているが、つくづく幼児対象のレッスンは難しいと感じる。5歳にもなれば大分、言語的なコミュニケーションも可能になる。しかし、3, 4歳だとそういうわけにもいかない。音感、リズム感、楽譜の理解、実際に弾いてみ…

聖書の教え

私がどこまで真剣にクリスチャンを名乗れるのか分からない。部分的にかもしれないし、全部、或いは全くゼロかもしれない。しかし、いずれにしても聖書との出会いは私を変えた。そしてそれは私の人生の航路と音楽上の探求の交点で起きた事である。 マタイ10章…

ロマン派の勉強を始める

今日はふとフォーレの『レクイエム』を聴きたくなりCDで聴いていました。ミシェル・コルボー指揮ベルン管弦楽団。コルボーは宗教音楽の解釈に定評があり昔購入したCD。とても好きだが、どうしてもデュリュフレのレクイエムと比較してしまう。作品としてフォ…

ウクライナの街のバッハ『無伴奏チェロ組曲』

ウクライナ情勢については正直なところ、新聞やニュースからの情報でさえ積極的に追い掛けてきたとは言えず、元々ロシアという国の政治的・歴史的背景についての知識も疎かったというのが正直なところである。プーチンとゼレンスキーというある意味で対照的…

今に生きる未来

最近、知り合って親しくしているZ先生は私の英語の先生であり、アーティスト、詩人でもあり私のメンター、友人でもあるのだが、その彼曰く「今、未来を生きろ」...これって禅問答のようだが、禅から昔学んだことは「今を生きる」(live the present moment)で…

介護職について思う

介護職には「キツい」「低賃金重労働」といった「割りに合わない」というイメージが付き纏っているかもしれない。確かにそれは一部当たっているのだが、私はそうは思わない。介護は人のケアを担う専門職であり、実に高いスキルが求められる対人援助職である…

音楽と政治について

音楽と政治というテーマで以前に20世期初頭頃の近代芸術の美学みたいなものについて思索していた時期があった。最近、音楽史の勉強をしようとGrout/Peliscaの『西洋音楽史』などを読んでいるが、アリストクセノスの立ち位置に引っ掛かるものがあった。曰くア…

音楽史を学ぶ

一応、ピアノを教えている身として、よく「ドレミファの成り立ちは?」とか音階だったり音律や調などどのように説明したら良いかと悩むことがある。単純に歌いながら経験的に学ばせる手法もあるけど、やはり原理で説明できないと気が済まないのは私の性質な…

Beethvenの信仰についての断片

最近、頻繁にBeethovenのPiano Sonataを練習している。「テンペスト」「月光」「悲愴」などmollを基調とする曲も美しいがNo. 6やNo. 9などのdurの曲も好きだ。いろいろと思考するとやはりベートーヴェンの音楽を進行抜きでは語れないと思う。"epiphany"とい…

イレーヌ・グリモーのベートーヴェン『テンペスト』を聴く

本当に言わずもがななのですが、昨晩SoundCloudで視聴したBeethovenのTempest Sonata(第17番)が素晴らし過ぎて、この感動、感激が薄れていないどころか深まっている事に安堵もしています。喧嘩を売る訳では無いのですが、この作品の後に書かれた、特に20世紀…